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うつ病について

うつ病の現状 うつ病の精神症状
身体にあらわれる症状 うつ病になりやすい人格
うつ病の治療 うつ病の予防

うつ病の現状

日本の自殺者数は、長い間2万3千人前後でありましたが98年に3万人を超え、その後も3万3千人前後で推移しています。福岡市でも同様で、97年の250人から98年には344人へと急増、その後300人台で推移しています。内訳を見ますと、特に中高年男性の自殺が急増しています。一方、自殺者の大半がうつ病だったことが分かっています。

うつ病は、うつ病になりやすい素因や真面目な性格に、精神的過労、心理的葛藤、社会・経済的不安などの心因や身体的疾患、身体的過労、出産、身体的発達過程などの身体因が加わって発症すると想定されています。近年、長引く不況、企業における経営効率の追求、情報化による労働の質・内容の変化、終身雇用制の崩壊など労働環境に大きな変化がみられ、職場ストレスが増大しており、「強い不安、悩み、ストレス」を持つ労働者の比率が急速に増加していますが、働き盛りの中高年男生にはストレスフルで受難の時代といえます。うつ病や自殺者数の増加と無関係ではないと思われます。


うつ病の精神症状

うつ病は「気分が沈んで晴れ晴れしない」、「何となく憂うつ」、「笑えない」といった感情障害と、「意欲がわかない」、「元気が出ない」、「何事にもおっくうで何もしたくない」、「人と話すのも億劫で、人と会いたくない」、「頭の回転が悪くなり理解力、判断力、決断力が低下した」などの意欲・行動面での渋滞、さらに「今まで楽しんでやっていたことが楽しめない」といった興味の喪失などの精神症状を主体とし、元気がなくなり口数も減って笑顔が消え、仕事の能率低下、ミスの増加などで周囲にも気付かれます。「自分がつまらない存在で、生きている価値がない」などの考えが起こり自殺を考えるようになるのです。

【表1】うつ状態の精神症状と身体症状(大熊)
感情 気分 ゆううつ、悲哀・ 淋しい、 不安・焦燥、 苦悶、 無感情
身体感情 不調、不健康感
自我感情 低下、過小、自責、劣等感、悲観的、絶望
意欲・行為 個人面 制止、寡言・寡動、昏迷、焦燥・徘徊
社会面 閉居、厭世、自殺
思考 形式面 制止
内容面 微小妄想、罪責妄想、貧困妄想、心気妄想、虚無妄想
身体機能 不眠(浅眠、早朝覚醒)、食欲低下、やせ、便秘、性欲低下、日内変動・朝方抑うつ、頭重、頭痛、肩こり、しびれ、発汗、口渇、倦怠


身体にあらわれる症状

「何となく身体がだるい、疲れやすい」などと漠然としたものから、頭痛・頭重、めまいなどの神経症状、食欲低下や味覚の鈍麻、痩せ、便秘、下痢、嘔吐などの消化器症状、息苦しさ、動悸などの循環器症状、さらには性欲減退、月経異常などが多く、睡眠障害は殆どの人に起こります。表2はそれぞれの身体症状の出現率です。このように、さまざま身体症状が全身的に、しかも非常に高率に現れるのがうつ病の特徴です。身体症状が前景に出て、精神症状が自覚されないケースも少なくありません。この為、うつ病の患者さんの80% が、精神科ではなく、内科など一般身体科を受診しているとの報告があります。

身体症状のため身体の病気と思い、身体科を受診するが検査では異常が見当たらない、対症療法をしてみても治らない、この為病院を転々としているケースがありますが、うつ病による身体症状は本丸であるうつ病を治療しなければ治りません。検査で異常がない、あるいは治療にもかかわらず身体症状が良くならない場合は、うつ病ではないかと疑ってみる必要があります。

【表2】うつ病における各種の身体症状の出現率(更井1979)
症状 出現率(%) 症状 出現率(%)
睡眠障害
82〜100
めまい
27〜70
易疲労・倦怠感
54〜92
耳鳴り
28
食欲不振
53〜94
異常感覚
53〜68
口渇
38〜75
頭重・頭痛
48〜89
便秘・下痢
42〜76
背部痛
39
悪心・嘔吐
9〜48
胸痛
36
体重減少
58〜74
腹痛
38
呼吸困難感
9〜77
関節痛
30
心悸亢進
38〜59
四肢痛
25
性欲減退
61〜78
発汗
20
月経異常
41〜60
振戦
10〜30
頻尿
70
 


うつ病になりやすい人格

うつ病になり易い人格として、他人との衝突を嫌い他人に心から尽くそうとするタイプ、責任感が強く几帳面で仕事をさせると正確、綿密、勤勉、仕事熱心、凝り性で徹底的、真面目でごまかしやずぼらが出来ないタイプ、などが知られています。周囲の人達からは確実人で模範的と高く評価され信頼されます。

しかし、こうした性格傾向は「仲間はずれになりたくない」という人間の持つ基本的欲求のひとつである帰属欲求が脅かされることへの恐れの現れではないでしょうか?人は動物であると同時に心理的・社会的存在でもあります。人との対立を嫌い、頼まれた際に断れば嫌われるのではないかとの不安によって、即ち帰属欲求の危機への防衛の為に、無理をしているのかも知れません。無理をすることに慣れてしまって、それが性格となって現れていると考えることが出来ます。


うつ病の治療

うつ病に関わる神経伝達物質はセロトニンとノルアドレナリンです。長引く不安やストレスにより、脳内の情動の中枢でこれらの物質が放出され続け、ついには生産が間に合わず不足してきます。すると元の状態に戻ろうとする作用が働き、受容体の感受性が高まるのです。そこへ更なるストレスが加わると破綻を来たし、うつ病が発症すると考えられています。ですから、うつ病の治療には、まずストレスのかからない環境に避難すること(休養)と、感受性の変化した神経を元に戻すこと(薬物療法)が重要です。

1957年にうつ病の治療薬が開発されて以来、うつ病は治療可能となりました。さらに近年、セロトニンの選択的再取り込み阻害剤(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)が開発され、殆ど副作用なしに治療されるようになったのです。うつ病の治療薬は、効果が現れるのに数週間を要しますので、十分な量を充分な期間服用することが肝要です。しかもそれぞれの薬の有効率は70%程度ですので、A剤が駄目ならB剤、というふうに薬を試していく必要があります。

 うつ病の治療は抑うつ症状をとることではありますが、それで充分とはいえません。生き方、考え方を再検討して再発の予防を図らねばなりません。それには考え方、捕らえ方を修正する認知療法などの精神療法が有用ですので、専門医に相談されるといいでしょう。 
いずれにしても治療がうまくいくためには早期発見・早期治療が重要です。表3と表4はうつ病を疑うサインです。

【表3】うつ病のサイン・自分が気づく変化 【表4】うつ病のサイン・周囲が気づく変化
悲しい、憂うつな気分、沈んだ気分
何事にも興味がわかず、楽しくない
疲れやすい、元気がない、だるい
気力、意欲、集中力の低下を感じる
億劫で何もする気がしない
寝つきが悪くて、朝早く目がさめる
食欲がなくなる
人に会いたくなくなる
気分、体調は、夕方より朝の方が悪い
心配事が頭から離れず考えが堂々巡りする
失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
自分を責め、自分に価値がないと感じる
以前と比べて表情が暗く、元気がない
調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる
仕事や家事の能率が低下、ミスが増える
周囲との交流を避けるようになる
遅刻、早退、欠勤(欠席)が増える
興味やスポーツ、外出をしなくなる
飲酒量が増える

【表5】うつ病の発病に関係する誘因ないし状況(大熊)
個人・家族に関係する出来事 職業に関係する出来事
・近親者、友人の死亡・別離、離婚
・子女の結婚、遊学
・病気、事故
・家庭内不和
・結婚、妊娠、出産、月経、更年期
・転居
・家屋、財産などの喪失(火災、震災など)
・目標達成による急激な負担軽減
・停年
・仕事の過労
・家庭の経済問題
・職場の人間関係
・職務の移動(配置転換、転勤、出向、転職など)
・昇進、左遷、退職、停年
・職務に関係した情勢の急変(不景気など)
・職務に関係した困難
  (自分でコントロールできない要因)
・職務内容の変化
・職務上の失敗
・昇進試験や研修
・病気による欠勤と再出勤


うつ病の予防

うつ病予防・ストレス対処法を身につける
うつ病は、軽症うつ病まで含めると数人に一人が生涯に一度はかかるとされ、大変ポピュラーな病気です。うつ病になり易い素質をお持ちの方は小さなストレスでもうつ病になるでしょうし、なりにくいと思われる人も大きなストレスがかかれば発病の機会はある、即ち、誰もがうつ病になる可能性を持っていると考えた方が良いでしょう。

予防に大切なのはストレス対策です。日頃から頑張り過ぎていないかと自問自答してみる、適当なストレス解消法を見つけておく、相談する人を見つけておくなど、ストレス対処法を勉強しておくことが大切です。